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屋久島の森林/垂直分布

■標高差2000m

●サンゴ礁の海から雪の山へ

 北緯30度の少し北にある屋久島は、平均気温が20℃近い亜熱帯の北の端といった気候で、人里にはハイビスカスやブーゲンビリアなど熱帯の花も咲いています。
 しかし、山を登ると100m毎に0.6℃余り気温が低くなり、標高2000m近い山頂では6℃台と北海道なみの亜寒帯に近い気候となります。

 屋久島は直径30kmに満たない島ながら、南北2000kmにおよぶ日本列島の自然がつめ込まれているのです。海岸から山頂へ、気温の変化にしたがって南から北からへと植生が移り変わる植物の垂直分布を見ることができます。
 屋久島の垂直分布は世界遺産登録に関する国際自然保護連合のレポートでも、植物分布の地理上の区界を超える植生として評価されています。
里から望む奥岳の峰(永田岳)
南北2000kmにおよぶ日本列島の自然がつめ込まれている

■南の森と北の森

海岸近い平地のガジュマルの木
 海岸に近い平地はガジュマルやアコウなども見られる亜熱帯的な照葉樹林です。
 山地にかかると標高1000mを越えるあたりまで、関東地方付近まで広く見られるシイやカシが多い温帯南部の照葉樹林が山肌を埋めています。
 屋久島の中腹以下の森林は照葉樹林です。シイやカシ、ツバキのような艶のある厚い葉を持つ樹木がつくる照葉樹林は、ヒマラヤ山麓から日本の中央部まで東アジアの亜熱帯と温帯南部に広がる森林です。
 しかし、標高500mを越えると屋久杉があらわれ、700mあたりからは屋久杉林といえるほど針葉樹が多くなります。標高が高くなるにつれて、しだいに常緑の照葉樹林から紅葉する落葉樹も見られる森林へと移り変わります。
 このように、さまざまな広葉樹と屋久杉などの針葉樹がともに見られる森は温帯の森林を代表する姿です。

 屋久杉の多い森は山頂近くまで続きますが、寒冷な気候の山頂部では寒帯や亜寒帯と共通の植物も花を咲かせています。
 しかし、北海道なみという山頂でもトドマツのような温帯北部の寒冷地を特徴づける針葉樹がなく、もっとも高い所に見られる高木は屋久杉です。

照葉樹の森林(リンゴツバキ)
標高500m付近から山頂近くまで分布する屋久杉林
紅葉する落葉樹(コハウチワカエデ)